― 日本の歯科矯正に関する公的医療保険適用(法令・政策形成)の流れ

 

  政策 Policy と 政治 Politics の違い.

  医療政策を理解するための理論:

    ・ キングドンの政策の窓

    ・ 経路依存性

    ・ 争点と注目度の周期

    ・ 中位投票者定理

  社会問題とはなにか

 

年度

法令・政策形成と実行

社会課題ワーク(クレイム申立て,国民の請願,自治体の意見書)

1874(M07) 恤救(じゅっきゅう)規則
   

1922T11

(旧)健康保険法 3/25

 

 

1923(T12) 内務省衛生局は,T12.3.25に 『齒と健康』 という国民への啓蒙書(島峰徹著)を発行.
齒列不正は病気であり,これによる害をあげ,親たちは 「子どもが10歳から12歳位になったならば歯列矯正術を受けさせねばならぬ」 と,国民への歯列矯正の重要性を伝えている.
当時の内務省衛生局(現厚生労働省)では,歯列不正は国民にとって公衆衛生上の重要な問題であったことがわかる.
内務省衛生局
『歯と健康』 島峰徹著 内務省衛生局.大正12.3.25発行
国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/934779
1923(T12)   関東大震災 9/1 11:58  
1927(S02)

(旧)健康保険法施行 1/01-

 

   

1938S13

厚生省発足(旧)国民健康保険法

 

 

1945S20

 

終戦

 

1946S21

世界保健機関WHO憲章(健康の定義)1946/7/22に61カ国の代表により署名され,1948/4/7より発効.

健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的well-beingの状態であり,単に疾病又は病弱の存在しないことではない.到達しうる最高基準の健康を享有することは,人種,宗教,政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである.

1947S22

日本国憲法 施行:53

基本的人権の享有(第11条),幸福追求の権利の尊重(第13条),法の下の平等の原則(第14条)が明らかにされるとともに,①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すること(第25条第1項)とされ,これを具現化するものとして,国はすべての生活部面について,社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(第25条第2項)という国の責任が明確に規定された.

 

1948S25

世界人権宣言

 

1951S26

世界保険機関(WHO 加盟:

 

1956S31

国際連合(United Nation=UN)加盟

 

 

1958S33

国民健康保険法の制定

 

 

1961(S36)

国民皆保険の実現

 

 

1966S41

国際人権規約

 

 

1973S48

70歳以上の医療費無料(自己負担ゼロ)

 

 

1975(S50)

 

76回国会 衆議院 社会労働委員会 第1号 昭和501111 兎唇口蓋裂に対する保険拡大に関する請願(第1497号)

1976(S51)

 

82回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 昭和521025 口唇裂・口蓋裂児の医療に関する件

1975(S52)   82回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 昭和521025 口唇裂・口蓋裂児の医療に関する件  

1978(S53)

標榜診療科 「矯正歯科」 「小児歯科」 追加

 

 

1980(S55)
第91回国会 参議院 予算委員会 第10号 昭和55年3月17日 口唇口蓋裂についての質問

1982(S57)

唇顎口蓋裂の保険導入

 口蓋裂と矯正歯科―その保険導入の前後      ☛ 谷間の口がい裂児:この子らに健保を

1983(S58)

老人保健法の施行

 

 

1984(S59)

職域保険(被用者保険)本人の自己負担1

そしゃく機能障害   

 101回国会 衆議院 社会労働委員会 第30号 昭和5981

1989(H01)

子どもの権利条約

第24条(健康・医療への権利)子どもは,健康でいられ,必要な医療や保健サービスを受ける権利をもっています.

1990(H02)

顎変形症の保険導入

 

 

1994(H06)

子ども権利条約に批准・発効:第24条 締約国は,到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての児童の権利を認め,いかなる児童もこのような保健サービスを利用する権利が奪われないことを確保するために努力する.基礎的な保健の発展に重点を置いて必要な医療及び保健をすべての児童に提供する.児童の健康を害するような伝統的な慣行を廃止するため,効果的かつ適当なすべての措置をとる.

1995(H07)

学校歯科健診に歯並びの項目が追加

 

 

1996(H08)

顎口腔機能診断施設基準の追加

 

 

1997(H09)

同自己負担2

 

 

1998(H10)

 

平成10(1998)331日 公明党広島県本部と歯科矯正の保険適用を求める会より1万人を超える署名簿を厚生省(小泉厚生大臣)へ提出.

2000(H12)

かかりつけ歯科医初診料の保険導入

 

H120329日 三鷹市議会
H120330日 東京都議会

2002(H14)

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

中医協を巡る贈収賄事件(概要)
 「かかりつけ歯科医 初診料」の算定要件緩和に係る贈収賄事件
中央社会保険医療協議会を巡る贈収賄事件(中間報告)

 

2003(H15)

同自己負担3

 

 

2004(H16)

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

中医協を巡る贈収賄事件(概要)
 「かかりつけ歯科医 再診料」の単価引き上げに係る贈収賄事件
中央社会保険医療協議会を巡る贈収賄事件(中間報告)

中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて

 

2006(H18) かかりつけ歯科医廃止    

2008(H20)

後期高齢者医療制度始まる

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

 

 

2010(H22)

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

 

 

2014(H26)

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

 

 

2015(H27)

医療保険制度改革法が成立

 

 

2016(H28)

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

(国民健康保険への財政支援の拡充、入院時の食事代の段階的引き上げ、紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入などが盛り込まれた)

FDI口腔の健康の新しい定義:口腔の健康は多面的な概念であり、痛み、不快感、頭蓋顎顔面複合体の疾患がなく、自信を持って話し、微笑み、嗅覚、味覚、触覚、咀嚼、嚥下、そして表情を通して様々な感情を伝える能力を含みます。口腔の健康は、生活の質を高めるために不可欠な生理的、社会的、心理的特性を反映しています。

2017(H29)     H290915日 甲府市議会

2018(H30)

国民健康保険財政:市町村から都道府県単位へ

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

前歯3歯以上の永久歯萠出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)

 

H300622日 甲斐市議会

2019(R01)

 

FDI:口腔の健康と歯科矯正の再定義.必要な歯科矯正への財政援助を提言

200国会 参議院 厚生労働委員会

 子供の歯科矯正に保険適用の拡充を求めることに関する請願(沖縄,立憲,共産)

2020(R02)

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

201国会 参議院 厚生労働委員会

 子供の歯科矯正に保険適用の拡充を求めることに関する請願(沖縄)

203国会 参議院 厚生労働委員会

 子供の歯科矯正に保険適用の拡充を求めることに関する請願(立憲)

R20323日 山梨県議会

R20325日 兵庫県議会
R20625日 東村山市

2021(R03)

 

204回国会 衆議院文部科学委員会第16号 526(共産)

204回国会 衆議院厚生労働委員会第28616

 

204回国会 衆議院本会議第35号 616

 子どもの歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願(共産)

R30301日 富士吉田市議会

R30311日 鳴沢村議会

R30903日 山梨県中央市議会

R30924日 山梨県上野原市議会

R30929日 習志野市議会

R30930日 大月市議会

R31021日 奈良県議会

R31202日 広島市議会

R31209日 大和高田市

R31215日 大和郡山市議会

R31216日 西桂町議会

2022(R04)

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

第208国会 参議院 厚生労働委員会
 子供の歯科矯正に保険適用の拡充を求めることに関する請願(立憲)
 
第208国会 衆議院
 
第208回国会 参議院 消費者問題に関する特別委員会 第4号 令和4年3月15日(立憲)
○政府参考人(榎本健太郎君) 学校健診におきまして歯並びなどについて受診勧奨を受けて、それによって患者さん、お子様が歯科医療機関を受診された場合には、疾患や異常の有無を確認するために歯科医師が行う必要な診察などにつきましては、これは保険請求が可能となってございます。
 それからまた、歯科医師が顎変形症などの該当の有無を確認するために必要な検査を行った場合は、レントゲンなどの画像診断につきましても保険請求ができるということとなってございます。
  学校健康診断の事後処置としての病院や診療所の受診勧奨を受けた場合,これに係る費用は従来より保険請求可能であり 「保険適用」 されるものであったが,多くの歯科医院では自費扱いにすることも多かった.これを評価し,明確なルールとして,新たな診療報酬点数として,後に『歯科矯正相談料』 が新設されることになる.

 

R40328日 令和3年度 第1回 東京都歯科保健対策推進協議会 令和4年3月28日

〇宮武委員:西井先生、どうもありがとうございました。宮武です。 実は、私は1982年、昭和57年に矯正治療が保険に導入されたころの責任者でした。その辺の経緯は、西井先生が言われたことに少し追加させていただきます。これは唇裂口蓋裂の患者さんで、その手術をした後の矯正という限定だったんですね。なぜそうなったかというと、そもそも唇裂口蓋裂の外科的な手術というのは、ここにも書いてあります育成医療によって公費で負担されてきたわけですね。親御さんにしてみれば、手術は公費でできたのに、その後矯正治療が必要だということになったら、これは費用を自費でなければできないのはおかしいのではないかというのがそもそもの発端でした。子供を殺しちゃったという話はその以前にあって、底流にはなっていると思いますけれども、保険の適用が問題になったのはそこだったんですね。その前に、育成医療の中に矯正医療を入れるかどうかということがまず取り上げられないと、保険というのは制度的に公費の残りをもって、結果的には公費負担で全部行うということになっていますから、育成医療の中に歯科矯正治療を入れるという必要があるかどうかということが問題になっていました。 ただし、そんなことを言っても、実際に手術を行って矯正治療も必要だということは事実ですので、それは何とかしなきゃいけないということで、とにかく手術後の患者さんの矯正については入れようじゃないかということから始まったんですね。 その後、症状が拡大をされて現在に至っているわけですけれども、やはり手術をしたかどうかということが一つの基本になってきていると思いますし、それから育成医療の対象になっている者がまず入って、その後、矯正治療は連続して行うということになっていますね。 その当時、唇裂口蓋裂の発生率というのは500人に1人と言われていたわけですね。0.2%。1,000人で2人ということですから、例えば東京都は10万人ぐらいお子さんが産まれているんでしょうかね。そうすると、年間200人ぐらいの方がその手術の対象になり得る。それから症例は拡大されていますから、倍ぐらいあるとしても400人ぐらいと思われます。ただこれは、先生が今言われたように累積されていきますから、10年この治療を続けるということになると、その10倍以上になるわけで、それぐらいの人数が一応対象になるということになります。 ここから質問になるのですが、外国人に比べて日本人は歯並びが悪いと世間では言われているわけですね。 そのことに対してどのように取り上げるかということは、今ご説明あったとおりなんですけれども、学校歯科保健では、要治療、要指導というような形で、緩やかな勧告ということはあるにしても、「治療したほうがいいですよ」と言われると、その親はやっぱり矯正治療に行くわけですね。そうしますと、治療の必要があるという診断をしたのは学校歯科健診をした現場ですから、そこから後はどうなるかということが、問題になってくる。そうすると、矯正専門医が診断するかどうかということになるのです、一般の開業医である学校歯科医が、矯正の必要があるかどうかという診断をどこまでやるのかということになってくるのではないかと思うのですね。そこから後は、社会保険で見るか、別の公費の制度を導入するかという問題はあると思いますけれども、その辺については、どのようにお考えでしょうか。

 

R40325日 橿原市議会

R40617日 奈良県斑鳩町議会

R40621日 奈良県広陵町議会

2023(R05)

 

第211国会 参議院 予算委員会(自民)
 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願
また,学校歯科健診で不正咬合(こうごう)を指摘されても,歯科矯正が必要な場合には健康保険が利かず,費用が高いことから治療を諦めてしまうこともある.歯科医療が必要な全ての人に提供されることは,基本的人権に由来した健康に生きる権利(健康権),憲法第二十五条で保障された国民の権利である.国には,社会保障として誰もが必要な歯科医療を受けられるようにする責任がある.

 

211回国会 参議院 予算委員会 第2号 令和5年3月1日  説明・質疑者:島村 大(自由民主党)6:58分ごろから

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121115261X00220230301/519

 すごくカリエスは減ってきましたが、どういう状況が多いかというと、歯並びの悪い方なんですね。いわゆる歯列不正といいまして、見た目だけが悪いわけではなくて、本当にかもうとしたときに上と下がかんでいない子が多いんですよ。それぐらい歯列不正の方が今大分増えている。これはやはり、軟らかいものを食べることとか、いわゆるかむ癖がなくなってきて、だんだんだんだんこの歯列不正が多くなっていると言われております。
  残念ながら、この歯列不正に関して、もし学校医の歯科医が、あっ、この子は歯並びが見た目ではなくて機能的に悪いので、こういう子をしっかりと歯並びのいい、いわゆる食べられるようにしてあげようということで受診勧奨をしますと、残念ながら今その
歯並びに関しては保険診療が利かないと。
  これを本当にどうするかということが、この子、お子さんが今時点のかめないということは、今後、健康寿命の延伸とか、いわゆる今後の生活習慣病とか、いろんな問題点が出る可能性が高い一つの大きな理由になります。
  ですから、そういう子たちをどうにか、経済的格差、同じ日本人に生まれてきて、ある方は、あっ、歯並びが悪い、食べられないんだったら矯正をしましょう、でも、経済的格差で、この子が残念ながら、お父さん、お母さんの残念ながら今の経済的にはできないというのは、私はこの日本ではあってはならないんではないかと思っておりますが、そこを是非、永岡大臣、御理解していただいていると思いますが、御意見をいただきたいと思います。

 

第211国会 衆議院 厚生労働委員会
 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願 (第594号-)与野党を超えての署名 102,595名.
  学校歯科健診で不正咬合を指摘されても、歯科矯正が必要な場合には健康保険が利かず、費用が高いことから治療を諦めてしまうこともある。

 

212国会 衆議院 本会議 第12

 子供の歯科矯正治療における保険適用範囲の拡充に関する請願(自民)

 

第212回国会 参議院 厚生労働委員会第3号 11月16日

 保険でより良い歯科医療を求めることに関する請願(共産)

 

 

2024(R06)

 

学校歯科健診後の事後処置の保険導入

 歯科矯正相談料(検査・診断の保険適用)

咀嚼能力,咬合圧検査の顎変への適用

別に厚生労働大臣が定める疾患の追加

第213回国会 衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会 第8号 令和6年月3日(公明)
 三年前に、これは厚生労働委員会の理事懇、理事会の場で、いつも我々、請願を採択するかどうかと理事会で議論することになると思いますけれども、そのときに、三年前、理事のメンバーで議論する中で、これは与野党を超えて、この歯科矯正の保険適用の拡大、検討できないか、これは採択できないかというので、みんなで議論したんです。
 歯のかみ合わせ自体がそもそも体全体に影響を与えることって多分やはりあるよねという議論になりまして、最終的には、これは消極的だったのは政府だったんです。政府が消極的だったんですが、与野党を超えて、これは一生懸命何とかやろうとみんなで説得をして、一定の解釈の下で採択することが決まったということがありました。これは一歩、非常に大きな前進だったし、私自身もすごく勉強になったんですが、それ以降、この歯科矯正の保険適用というのは少しずつ拡大をしてきました。

 問い:社会課題
       主権者たる国民の要望に,なぜ政府は消極的であるのか?
         以下の論点からまとめる:
          1.健康で文化的な生活(人権)
          2.学校での いじめ(幸福追求権)
              → 社会的・精神的な健康(諸外国の現状)
          3.国家としての健康指標の改善
              → 学校健康診断のあり方,健康の価値
          4.医療資源(歯科矯正)の公平な配分
              → 口腔の健康格差是正
          5.研究結果の社会適用(矯正経験者:国民の7.6%)
              → 学術研究結果の社会還元の公平性

 

第213回国会 衆議院 厚生労働委員会 第19号 令和6年5月15日
 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(共産)(第一三三二号)

 

第213回国会 衆議院 厚生労働委員会 第23号 令和6年6月21日
 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(共産)(第三〇六〇号)

 

第216回国会 衆議院 厚生労働委員会 第2号 令和6年12月18日
 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(立憲)(第一一二号)

 

広島県保険医協会 請願署名

 

 

愛知県保険医協会

保険でより良い歯科医療を求める請願

署名

 

2025(R07)

第217回国会 衆議院 厚生労働委員会 第5号 令和7年3月26日(立憲)
 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願
二〇二四年度診療報酬改定では、学校歯科健診後に歯科矯正が必要かの「相談」部分は保険適用になったが、保険で歯科矯正ができる条件は狭き門のため、条件の緩和が必要である。国は社会保障として誰もが必要な歯科医療が受けられるように制度の整備や十分な財源を確保する責任がある

 

北海道保険医協会

保険でより良い歯科医療の実現を

 

⇒ 社会ワーク活動の3-5年程度後には政策形成が実施され,国民生活の向上へとつながっている.日本では民主主義の歴史がまだ浅く,『ルールは与えられ守るもの』 という意識が強く,国民が社会的不平等に気づき,クレーム申立て(社会活動)が政策に反映されるまでには時間を要している.わが国の歯科矯正医療の社会への適用は,欧米より30年ほどの時間差がある.これはわが国の歯科医療では,目前の患者に注視する技術的次元が強く,国民や社会全体の健康指標向上の視座,経済的障壁によって受診できない本当の患者,国民の声(請願や意見書)に対し,臨床医や研究者,歯科矯正医は無関心である.公平な歯科矯正医療とは? ほんとうに歯科矯正医療を必要としているのは誰か.

 

― 医療倫理・社会問題として,子どもの歯科矯正医療の公平性を考える視点

 1. 目前の診察治療での規範:
 2. 組織(診療所・病院)での規範:
 3. 社会全体や国家でなすべき規範:

 ・健康は人権であるという視点.生存権 健康権 生命権 幸福追求権
 ・すべての国民に負担可能な費用で医療サービスを提供すること.
 ・過大な医療費負担によって経済的破綻に陥ることがないように国民を保護することは国家の義務であること.
 ・常に視点は低・中所得の人々におくことで,国家としての健康指標の改善が初めてなされること.
   → 歯列不正・不正咬合と健康: well-being 上の健康格差のある医療領域

 健康:肉体的,精神的,社会的,すべてが満たされた状態 well-being
   → 諸外国の現状を知り,日本人の持つ 「健康で文化的な生活」 の概念の現状や位置を知る.

  ☛ OECD加盟国における 「子どもの歯科矯正」 への公的医療保険の国際比較(2016)
  ☛ ヨーロッパ諸国における歯科矯正医療の公的医療保険の現状(2010)
  ☛ 米国における歯科矯正の公的医療保険 「医学的に必要な歯科矯正」 の適用基準

 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
  すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態

 

 

 日本の歯科矯正医療は,文化的背景からも,その社会への適用という医療概念に関して,西洋諸国とは異質な価値感が未だ伝統的な慣行として残っています.グローバル社会の現代において,たまたま日本に生まれた子どもたちにとって,口腔や顎顔面の健やかな成長発育に関する 「医学的に必要な歯科矯正医療」へのアクセスには,社会経済的障壁が存在しており,「歯の位置異常という疾病」 や 「社会参加の制約となる外見上の問題 Social handicap:人の視線という痛み; 醜」 など,健康上の問題への歯科矯正医療の公平なアクセスの実現は,喫緊に是正すべき社会課題となっています.

 われわれ医療提供者側も,日本の子どもたちの現状は大変残念なことであり,費用負担の面から治療開始を断念される患者さまには,日々,日常的に接しています.すべての国民が適切で基礎的な口腔の保健医療サービス(歯科矯正)を,必要なときに負担可能な費用で享受できる社会が実現するように,健康の社会的決定要因の是正が喫緊に改善されることを強く望んでいます.どうぞご理解頂きますようお願い申し上げます.

 

 

【歯科矯正に公的医療保険の適用される場合】 註: 2024年現在.青字は法令改正による導入年度

 

  学校健診で歯列矯正の受診勧奨を受けた場合の相談・検査・診断に係る費用

            「歯・口腔の健康診断のお知らせ」  を必ずお持ちください.

  別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常

  前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)

平成30年(2018)改訂により追加, 令和4年(2022)改訂により「小臼歯」を追加.

  顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)

平成02年(1990)改訂により追加

平成08年(1996)改訂より顎口腔機能診断施設基準が追加

平成20年(2008)改訂により実態に即した評価をおこなうため,

 歯科矯正診断料に係る診断を行う時期として,

 「一連の歯科矯正治療における顎切除等の手術を実施するとき」を追加.

 

  の「別に厚生労働大臣が定める疾患」は,令和6年度の診療報酬改定によって,下記66疾患まで拡大整理されています.

 別に厚生労働大臣が定める疾患とは、次のものをいう。

※各疾患の発現率/ 有病率は,

   公益財団法人 難病医学財団 難病情報センター

   国立研究開発法人 国立成育医療研究センター内 小児慢性特定疾患情報センター

   関連学会web,その他の論文より引用.

 

    昭和57年(1982)改訂により追加
(1) 唇顎口蓋裂                                                     400-600人に1人(口唇裂34.5%,口唇口蓋裂45.0%,口蓋裂20.5%)

    平成14年(2002)改訂により追加
(2) ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)            3千~5千人に1人の割合
(3) 鎖骨頭蓋骨異形成 
                                           117人(亀谷ら,1980)100万人に1人
(4) トリーチャ・コリンズ症候群
                    5万人に1人の頻度
(5) ピエール・ロバン症候群
                                        130人(久保ら,1971
(6) ダウン症候群 
                                                   出生数2,200人前後/年(佐々木ら,2019
(7) ラッセル・シルバー症候群
                                      約500~1,000人(2009年調査)

    平成16年(2004)改訂により追加
(8) ターナー症候群
(9) ベックウィズ・ウイーデマン症候群
                   218名(H21年度調査)
(10) 顔面半側萎縮症

(11) 先天性ミオパチー
平成20年(2008)改訂により追加        約1,000人
(12) 筋ジストロフィー平成22年(2010)改訂により追加           約25,400人
(13) 脊髄性筋萎縮症平成30年(2018)改訂により追加      10万人に1~2人

    平成20年(2008)改訂により追加
(14) 顔面半側肥大症
(15) エリス・ヴァンクレベルド症候群
                           推定200~300名
(16) 軟骨形成不全症
(17) 外胚葉異形成症
(18) 神経線維腫症
                                      推定40,000人(3千人に1人)
(19) 基底細胞母斑症候群
                                4千人に1人
(20) ヌーナン症候群                                      520人(平成22年調査
(21) マルファン症候群
                                     2万人()
(22) プラダー・ウィリー症候群
                                1万~1万5千に1人
(23) 顔面裂
(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)

    平成22年(2010)改訂により追加
(24) 大理石骨病                                 約100人
(25) 色素失調症
                                         約2,500人(10万人出生に1人)
(26) 口腔・顔面・指趾症候群
                               推定25万人に1人(口蓋裂患者100例に1例)
(27) メビウス症候群
                                        推定10万人に1人(5万人に1人)
(28) 歌舞伎症候群
                                        約4,000名(推定罹患率1/32,000)
(29) クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
                有病率は不明.1,000症例が報告
(30) ウイリアムズ症候群
                                   2万人に1人
(31) ビンダー症候群 
(32) スティックラー症候群
                                          約12,000人(1万人に1人)

    平成24年(2014)改訂により追加
(33) 小舌症
(34) 頭蓋骨癒合症
(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
(35) 骨形成不全症
(36) フリーマン・シェルドン症候群
                                   100例以上の報告あり
(37) ルビンスタイン・ティビ症候群
                           100~200名
(38) 染色体欠失症候群
(39) ラーセン症候群
                                       35例(10万人に1人)
(40) 濃化異骨症
(41) 6歯以上の先天性部分無歯症

    平成26年(2016)改訂により追加)
(42) CHARGE症候群                                    2万分の1程度(平成21年度研究)
(43) マーシャル症候群
(44) 成長ホルモン分泌不全性低身長症
(45) ポリエックス症候群
(XXX 症候群、XXXX 症候群及び XXXXX 症候群を含む。)
(46) リング 18 症候群

    平成28年(2018)改訂により追加
(47) リンパ管腫
(48) 全前脳胞症
                                         推測1万人に1人
(49) クラインフェルター症候群
                                62,000人(男性のみ)
(50) 偽性低アルドステロン症
                                稀,有病率は不明
(51) ソトス症候群
                                        2,500人
(52) グリコサミノグリカン代謝障害
(ムコ多糖症)

    令和2年(2020)改訂により追加
(53) 線維性骨異形成症
(54) スタージ・ウェーバ症候群
(55) ケルビズム
(56) 偽性副甲状腺機能低下症
(57) Ekman-Westborg-Julin 症候群
(58) 常染色体重複症候群

    令和4年(2022)改訂により追加
(59) 巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)
(60) 毛髪・鼻・指節症候群
(Tricho-Rhino-phalamgeal症候群)

    令和06年(2024)改訂により追加

(61) クリッペル・ファイル症候群(先天性頸椎癒合症)          40,000-42,000人に1人
(62) アラジール症候群                                        200-300名

(63) 高IgE症候群                                            20名以上
(64) エーラス・ダンロス症候群                                 5,000人に1人   
(65) ガードナー症候群(家族性大腸ポリポージス)             10万人に2.29-3.2人

    平成30年(2018)改訂により追加
(66) その他顎・口腔の先天異常

 

 

 

8 7の(66)のその他顎・口腔の先天異常とは、顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患であり、当該疾患に起因する咬合異常について、歯科矯正の必要性が認められる場合に、その都度当局に内議の上、歯科矯正の対象とすることができる。

 

9 別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常に対する歯科矯正の療養は、当該疾患に係る育成医療及び更生医療を担当する保険医療機関からの情報提供等に基づき連携して行われる。

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